鋼作_鍛冶屋_有限会社 田中鉄工所
 
情報誌 ブレス 4月号 掲載記事

 高山市江名子町で鉄工所を営む田中宏知さん。自らを「鍛冶屋」と称し、鉄を使ったモノづくりを大切にする職人でもある。
 田中鉄工所は、飛騨という土地柄もあって、木工機械の刃物の鍛造や建築金物などを造っていた、お父さんの代から四十年以上、鍛冶屋さんを続けてきた。
「鉄を使ったモノづくりを通して、技術や文化を伝えていくことが信念」だと言う田中さん。お父さんの代から二十数年にわたって宮大工や漆工などの職人さんたちと連携をとりながら、各地の寺社をはじめ、屋台などの修復や復元にも取り組んできた。


 祭屋台の車の外周には鉄でできた輪金がはめこんであり、引き回しなどで摩耗したり傷んだときに修復が必要になる。輪じめといって、木製の車輪よりも小さな径でつくった輪金を高温に熱して膨張させ、径が大きくなったところで輪にはめ、冷やして締め付ける。
 輪じめの仕事を通して、全国の屋台の車を見る機会も増えた。「屋台の車を見ていると、それを作った大工の熟練の技が伝わってきます」と田中さん。
 屋台などの修理は十年から十五の間隔で行われる。ところが、いざ修理をしようとなったときに、地元では大工はいるが、鍛冶屋がいないということがあるそうだ。
 高山では祭屋台保存技術協同組合を早くから結成。職人が揃っていることや、職人同士が連携できることから、「高山にもっていけば大丈夫」との評判が、ここ数年で全国に広まっていった。


 現在は八年間かけて開発した落雪防止のネットを主力製品として流通させたいと、販路の拡大にも意欲的に取り組んでいる田中さんだが、昨年より「造形」の領域へと活躍の場を広げようと模索している。インテリア装飾品やデザイン鍛冶、オーダー加工などにも積極的に取り組みはじめた。「鉄製品は、色もカタチもきれいになりすぎました。もっとアバウトなカタチや色を出せないか」とさまざまな作品づくりを始め、異業種から「おもしろい」という評価をもらった。
「モノづくりは日々の鍛錬であると同時に、技術を伝えていくことでもあるんです。いわば生き残っていくためのプロセスでもある。
 そうして造ったモノを世間に認めさせたいということもどこかにあります」鉄の持つメリット、デメリットを知ってもらうことで、さらに鉄の可能性が広がっていくのではないかと考えている。


戻る
 
鋼作_クレジット